グランドデザインコンテスト

現代住環境

第2章 国内の戸建住宅における快適性

2-3 現代の戸建住宅向けの暖房設備など

今までの事柄を念頭に入れながら、現代の戸建住居にはどのような暖房設備が適しているのか、またどの様な暖房設備が広く使用されているのか、及びこれから伸びる事が予測される暖房設備や話題性に富んだ暖房設備などを表-1に一覧として纏めてみた。システマチックに分類して見るといろいろな方式の機器が多く在る事に気がつくであろう。これらを暖房原理別にグループ分けしながら、どの型式の設備が自分の家の暖房設備なのか、又は、これから新しい設備を導入するのにはどの型式の設備が我家に向いているかを考える資料に供して頂ければうれしく思う。

強制送風式(エアコン)
先ず初めに、第一グループの放射熱・強制送風式に入る設備は略称で一般にエアコンと呼ばれていて、現在では最も設置実績の多い暖房設備いえる。熱源(室外機)から取り込んだ熱を室内に放出(室内機)する方式の暖房設備で、概略、動作原理の解説をするならば、電力でコンプレッサーを動作させて冷媒を圧縮し発生する圧縮熱を取り出して室内機の熱交換器のフィンからモーターの回転でブロワーを回し強制的送風で室内に熱を送り込む暖房方式といる。類似型式に、熱源にガス(都市ガス、LPG)の燃焼熱を使用した暖房方式がある。やや問題として残る事は、連続運転時間に制約がある事、外気温がある一定の温度以下では運転できないなど、メーカーにより制約条件は多少異なる場合があるので製造元の取り扱い説明書、または注意書きに従った運転をする必要がある。

赤外線放射・自然対流式(オイルヒーター)
次いで、第二グループはラジエター内に密閉封入されているオイルを、その中に投げ込まれているシーズヒーターを電気で加熱し、オイルの対流を利用してラジエター全面を均一な温度分布とする。

その熱をラジエターから自然放熱(赤外線放射)させて室内を暖める、またラジエター周りでは上昇気流が発生するので自然対流が発生し、熱の移動を容易にして室内を均一な温度にしてくれる。

オイルヒーターの設置場所は床面に置くのが普通であり、熱源が床面に近い事から、所謂、頭寒足熱式の暖房が得られる。
第二グループ中の温水(またはスチーム)をボイラーから供給しラジエターから熱を放射する型式の暖房設備(セントラルヒーティング2)は大型商業施設や業務用の暖房設備として日本でも広く使われているが、一般の戸建住宅での導入は設備が大型化する事などで稀と考えられる。欧米では個人住宅でも導入例が多いが、国内では参考程度に留めていただきたい。

前述の赤外線放射・対流式の暖房設備(オイルヒーター)は床面に静置して、熱が下から上へ自然対流を起こし部屋全体に熱を送り届ける低所熱源・自然対流型暖房であるのに対し、第一グループの放射熱・強制送風式暖房設備の室内機は天井、または壁の上部に設置されて機械的送風で熱を強制的に室内の下方へ送るのが特徴であると同時に欠点でもある。この方式は、高所熱源・下向送気型暖房と言い換える事ができる。この事について少し解説する、熱は放っておけば物理の法則に従って下から上へと上昇していく。故に、エアコンの室内機の熱放出部(フィン)が室内最上部に取り付けられている事は物理の法則から見て不利な設置場所なのである。そのままでは熱は天井へ昇ったままになり足元、腰や頭の高さ辺りは少しも温まらない甚だ不都合な温度分布となってしまうのである。

この対策として、室内機フィンの熱はブロワーを回し強制的に下向きに送風するようにしているが、熱は上へ昇ろうとする性質を持っているのでどうしても床面近くは温度が低くなり、それに反し中心部や天井付近は其れよりも温度が高くなる。結果として、皆様がご存知の通り、部屋の上部の温度は25℃程度に暖かいのに腰や頭部辺りは18℃前後、膝や足元あたりは15℃前後の温度分布になってしまう。この温度分布は快適であるとは言い難く、所謂、「頭寒足熱」とはまったく逆の温度勾配を示し甚だ身体には不都合な現象が生じる事になる。

(表1)市場で入手可能な暖房設備類

暖房区分
一般名称
暖房原理
設備寿命 (概ね)
主な エネルギー源

1

放射熱・強制送風式 エアコン1 冷媒をコンプレッサーで圧縮し、圧縮熱を利用
<、=7年
電気(空気)
2
エアコン2 ガスの燃焼熱をファンコンベクターで室内へ供給
<、=7年
ガス(都市ガス、LPG)
3
赤外線・放射対流式 セントラルヒーティング1 電気ヒーターの熱をラジエタから熱放射及び空気対流
<、=7年
電気
4
セントラルヒーティング2 ボイラーの温水(蒸気)をラジエタへ送り、其処から室内へ熱を放射・対流
<、=7年
電気、ガス、化石燃料
5
セントラルヒーティング3 電気でオイルを加熱しラジエタから熱を放射・対流
=、>7年
電気
6
赤外線・放射対流式 床暖房・温水循環式-1 深夜電力で温水を蓄熱槽に溜めフローリング床下の管内に温水循環し床材からの遠赤外線輻射熱で暖房 <、=7年 (30年保証する会社あり) 深夜電力・温水蓄熱槽
7
床暖房・温水循環式-2 コンプレッサーで冷媒を圧縮した発生熱を蓄熱槽に貯めフローリング床下の管内に温水循環し床材から遠赤外線輻射熱で暖房
<、=7年
電気・空気
8
床暖房・蓄熱式-1 タイル等(石材)の床下に埋設した管内に温水を循環・蓄熱し輻射熱で暖房
<、=7年
ガス・石化燃料
9
床暖房・蓄熱式-2 タイル等(石材)の床下に埋設したヒーターに電流を流し加温・蓄熱し輻射熱で暖房
<、=7年
電気
10
薪ストーブ式暖炉 暖炉全体からの遠赤外線・輻射熱、及び煙道熱を対流させて暖房, 余熱は回収して温水蓄熱槽へエネルギー貯蔵
=、>7年
薪(木材、廃材など)
11
その他1 遠赤外線・輻射熱・対流式 床暖房・蓄熱式 太陽光発電しその電力で温水を蓄熱槽に溜め、温水循環で床暖房。
=、>7年
太陽熱
補助エネルギー
12
その他2 太陽光(熱)利用式 太陽熱・蓄熱式 太陽熱を地下などのタイル(石材)に昼間に蓄熱し、夜間に放熱させて暖房
=、>7年
太陽熱
補助エネルギー

(禁無断転写・転用、原表:大郷,2009)

然しながら、この様な温度分布を示すエアコンが普通の状態であると信じ込んでしまっている人は少なくないであろう。高所高温・低所低温は身体の健康の為には良いものではないし、この温度分布を示す室内環境を快適と感じる人は少ない事であろう。この問題のために、メーカーではいろいろと知恵を絞って自動的に送風方向を変化させたり、送風量を時間とともに強弱と変化させたりして対策を講じている。また、あるメーカーでは天井付近の高温部の空気を攪拌するために大型の扇風機然とした空気攪拌プロペラなどを別途取り付けて、併用する事を薦めたりしているが快適性を確保する根本的な解決とは言い難いのである。

ほかにもエアコンを不快と感じる場合があるが、それは空気が乾燥し過ぎるためで、空気が室内機のフィンから放出される際に空気が急に暖められた段階で相対湿度が下がってしまう為である。加えて、強制送風の風が肌を撫でていく事に不快感を覚える人も少なからずいるし、風を受ける事で人は実温度よりも室温を低く感じるのでる。一般に体感温度は風速1m/sあたり1℃低く感じると言われている。

この他に、エアコンが熱エネルギー効率上で不利であり当然ながら経済的に不利な点があるが、この解説は紙面の制約があるので次の号でディスカッションしたいと考えている。

 


矢印2-4 遠赤外線・輻射熱式(床暖房)

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