第3章 グランドデザインコンテスト
床暖房が現代の戸建住宅において急激に実績を伸ばしている理由の一つに、寒冷地に建てた住宅に床暖房を導入し、その評価が高かった事が挙げられる。 それは寒冷地ほど床暖房の良さを痛感しその恩恵を享受できるからである。
ここに一つの回答があるので紹介する。昨年(2008年)に「新電化建築と快適な住環境」などのキーワードで「グランドデザインコンテスト」(学芸図書主催)が行われた。 数多くの新進気鋭デザイナーや工務店などから多数の応募があり、昨年11月末に都内渋谷区で審査発表と表彰式が行われた(http://www.gd-contest.com/)。
最優秀賞1作品と入賞5作品が表彰されたが、其の中より本号のテーマ「現代住宅と快適性」にマッチしている入賞作品二例を紹介する。 一つは長野県八ヶ岳に建築された作品で「新電化と床暖房の八ヶ岳の家」、もう一つは岩手県花の巻市の「薪ストーブ暖炉を備えた新電化住宅」で両方の作品(建物)とも寒冷地に建てられた戸建住宅であり、エネルギー源には夜間電力を利用し温水蓄熱槽にエネルギーを貯蔵しておける方式の床暖房を採用して快適な住環境を確保されました。
これら床暖房を導入した施主様達は異口同音にその快適さを賞賛しています。
更に、これらの建物が建てられている地域は著者が海外赴任したことのあるドイツ、スイス、オースリア・チロル地方と気候が良く類似している。
例えば、「八ヶ岳の家」は標高の高い八ヶ岳高原に位置し木質系の建物に床暖房と夜間電力を利用したエネルギー源の快適性と有効性がより一層顕著に現れる環境に建てられている。
冬季夜半には−25℃程度に下がる厳しい気候環境にあっても、床暖房は都会などの緩やかな気候地域に建てられた住宅の床暖房と何ら変わる事の無い快適さを提供してくれる特徴を有している。
国内のある熱源の製造元の製品カタログなどを注意深く見ると興味深い事が書かれている、それは外気温が−4℃以下に下がる場合は熱源の運転を中止してくださいと但し書きが書かれていたりする。これなぞは、暖房設備は何の為にあるのか、どのような気候環境下で運転されるべきか施主の立場で考えずに、全く理解に苦しむ手前勝手な製品と其れの広告宣伝をしている。利用者さえ但し書きに気が付かなければ売ってしまえという、売り逃げ的な気配すら感じるのは著者だけであろうか。
また、岩手県花の巻市の「薪ストーブ暖炉の在る新電化住」」の作品は更に緯度が高いところに建ててあり冬の寒さは長野県以上であるのと考えられるので床暖房の快適さと有難さはなおさらの事である。
「薪ストーブ暖炉の在る新電化住宅」の作品にはタイトルにあるように薪ストーブ型暖炉が新築家屋の居間の一角に主のごとくに設置されていて、このお宅のフォーカルポイントにもなっている。 施主様は以前に淡路神戸の大地震よる災害を経験されていて、其の経験から新しく家を建てるなら災害時でもライフラインを自分で確保できる様にしたいとの要望でデザイナーと相談して薪ストーブ暖炉を導入しとの事です。
昼間は暖炉で薪を燃やして暖を取り、料理や家族の団欒の場を提供してくれるだけではなく、暖炉の廃熱を回収して温水蓄熱槽に蓄熱して、夜間電力の消費を楽にする補助熱源としても働いている。
特に、冬の寒さは厳しく、万一に商用電力の送電が止まったとしても暖炉があれば暖房の確保とその熱を利用して炊事などには事欠く事は無くなるであろうとの理由で薪ストーブ暖炉を導入されました。
暖炉を導入してさらに良かった事は、窓の外は深々と雪が降り積もる寒い夜でも家の中では赤々とした揺れる炎を見ていると不思議と心が和み癒されるとの事、そしていつの間にか暖炉の周りには家族の団欒の輪が出来ているとの事で当初は予想していなかった嬉しい誤算で、この薪ストーブ暖炉を床暖房の補助熱源として導入して本当に良かったと感想を述べていました。