グランドデザインコンテスト

現代住環境

第5章 戸建住宅向けの床暖房と夜間電力

5-1 住宅事情による床暖房の設置方法

ES6000それでは、最後に、一般家庭の床暖房にはどの程度の電力量(エネルギー)が必要なのであろうか、そして、床暖房はどの部屋、どの部分に施工すると快適な住環境が得られるか述べてみたい。

先ず初めに、暖房を効率よく働かせるための基本はその「家の中」で最も寒い場所を優先的に暖房する事である。次いで、「部屋」の中では同様に一番寒い場所に施工する事が肝要なのでる。

とかくすると、人が集まる場所や自分の周辺を暖めたがるが、これは局所暖房の考え方で、広域を暖房する床暖房には適用できない。

具体的な寒い場所とは、玄関、階段などが一般的に一番寒い場所であろう、この様な場所をコールドスポットと呼ぶ。次いで、洗面所や浴室ではないであろうか。これらの場所は常時人が居る事が無いので、居間などと比べてやや低めの温度設定でも良くエネルギーの節約になる。今まで一番寒かった場所を少し暖めるだけで建物内は驚くほど暖かくなるのであり、階段などはそこから二階へも通じているので熱は自然に二階も温めてくれて、まさに一石二鳥の効果が期待できるのである。

一般家庭では、洗面所、脱衣所やユーティリティー、及びキッチンは家庭の主婦が長時間家事で使う場所であり、水を使う作業が多いために足や腰を冷やしてしまう。床暖房は身体に優しく健康的な暖房システムで温かさを提供する事で幸せ気分を味わえて快適な生活が約束されるのである。そして、浴室の暖房は入浴時に急な冷えや寒さから身を守り、特に高齢者の不慮の事故などを未然に防ぐ効果は大きく是非施工したい場所である。

居間は、家族が団欒しくつろぐ場所でありしっかりとした暖房をしたい場所の筆頭である、最近は食事の場所とキッチンも一緒にしたLDK構造の住宅が増えてきているが、床暖房にとってより好都合である。広さは40平米〜70平米程度と最近では欧米並みの広い居間なども良く見かけるようになったが、床暖房にとっては広いほどその効果をより実感していただける事になる。 反面、空気強制噴出し式のエアコンでは広さのあまり隅々まで暖房が行き届かなくなる欠点を有していて、広い居間はそれなりに天井高を高くする傾向にあるが、輻射熱式の床暖房にとっては層流効果により何ら問題なく高効率な暖房が出来るのである。

床暖房それでは、実際的な部屋の利用のしかたを見てみよう、一般的な家庭では部屋の隅や壁際に家具などを設置する事と思うが、ここの部分に対しては一部の施工業者は、そこは人が行かない場所であるから暖房は不要であるとか、人は部屋の中心部に集まるから中心部を重点的に暖房する方が暖房効率を上げられるなどと説明しているケースもあると耳に入る事があるし、またカタログなどには床暖パネルの敷込む面積を最大12畳程度までと但し書きがあったりする。さらに、部屋全体の60〜70%程度を床暖パネルで敷き込んで下さいなどと、さらには、大きな部屋には使用しないで欲しいなどと自己の性能不足を施主側に押し付けようとしている設備メーカーも居るので選考には留意していただきたい。この様な床暖房パネル施設は薦められる方法ではない、正しくは部屋の広さに関係なく一つの室にコールドスポットを作らない様に、床暖パネルを部屋全体に対して敷き詰めることが肝要なのである。コールドスポットがなくなる事で部屋全体が均一に暖かくなるのである。

例えば、床暖パネル上にサイドボードなどの家具が置かれた場合を心配されるであろうが、その部分は床の上に断熱材(家具)が置かれた事と同じでその部分だけ温度が上昇しようとするが、輻射熱の原理で床材からの輻射効率が自動的に下がり、一定の温度で安定してくれる。 そして、部屋全体は常に平均的にどの場所でも輻射熱で温められるのでしごく快適にしてくれるのが温水循環型の床暖房なのである。

但し、電気ヒーター型の床暖房パネルの場合はこの理論は通用しない、特にヒーターをプラスチックの膜でサンドイッチ状にした形状や、フィルム状のパネルで床暖房する場合には注意を払う必要がある。その理由は、電気エネルギーで暖房パネルを暖めた場合、その上に家具が置かれたとすると、その部分は密閉され、「熱絶縁」されたような形になる。すると、ヒーターへは電流が連続して流れているので、その分の温度が上昇し続けていくことになり危険である。但し、もし仮に家具下の暖房パネルに個別の温度センサーが取り付けられていて細かく温度制御出来る様に設計されているシステムであれば使用する事は可能であろうが、一般的には、部屋全体に対して温度制御をかけているので家具下の暖房パネルは制御されていない状態であり温度上昇を続けて危険なのである。最悪は、プラスチックが溶けたりして内部で漏電やショート現象を誘発するリスクが大きくなる。

再度繰り返して解説するが、温水循環型の床暖房は床に家具などを置いても安全なのである。それは、床の上の家具によって確かにその部分は熱絶縁されたような形になるが、熱源の温水は常にパイプ中を流れているのでそこの温度は40℃より上昇する事はなく、電気のように熱がこもる事は無い。

さらに、対荷重性の問題が残る、電気ヒーター型では一般に根太上・床板下に床暖房パネルを敷き詰めるが床からの加重が直接的にパネルに掛かることになりプラスチック幕の変形や電気絶縁不良などを起こす可能性や危険性を持っている。これに反し、温水循環型の床暖房では対荷重性は強く安全である。それは、金属パイプ自身が機械的過重に強いことと、温水循環型の床暖パネルは、一般に根太間に設置するので床からの荷重は根太に伝わり、そして大引から束柱・基礎へと力が伝わるのでパネルには何ら荷重は掛からない事になり、電気ヒーター式と比べるとはるかに安全であることが判る。

電気ヒーター式の床暖房メーカーではカタログの説明に、フィルム状暖房パネルは自由度が高くどの様な形の部屋でも対応が可能であるとか、隅々まで100%の敷き込み率を可能にしたのが我社であるなどとメリットを強調して書かれているが、次のページを捲ると、其処にはランニングコストの説明が書かれていていたりするが、その内容を要約するとランニングコストは電気を使用しているので経済的であるなどと書かれているが、良く読み下すとパネルの敷き込み率50%で試算したなどと書かれている。故に、カタログを見・読む場合には其処に書かれている表面的な部分(売り手側の主張)はだけではなく、その裏にある真意(買い手側の要求)を読み取るように読者の方々は注意を払っていただきたい。


矢印5-2 正しい床暖房パネル施設

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