グランドデザインコンテスト

現代住環境

第5章 戸建住宅向けの床暖房と夜間電力

5-2 正しい床暖房パネル施設

話が大きく脇道に逸れたが、ここで本筋に戻そう。床暖房は一階の主要な生活空間に施設する事が快適な住環境を得る上で大切であることは既に述べた。しかしながら、都会の住宅密集地域などでは日照の問題などがあり、往々にして二階に居間やキッチンなどの主要生活空間を持ってくる設計方法も有りえる。このような場合でも、温水循環型床暖房は問題なく設置可能である。

上の様な特殊な例は別として、通常の住宅で二階に床暖房を施行する必要があるかを考えてみたい。

東京近郊あたりであれば通常は一階のみに施行するだけで十分と言って良いといえる、其れは、一階天井と二階床を通して熱が上がって行くるので、今日的な高気密・高断熱の家では特別な暖房が無くても自然と暖かくなってくる。一般の家庭では二階は寝室や、子供部屋などに割り当てられているケースが多く、そこはそれほど室温を上げる必要のない部屋である。 事実、著者の家では, 建物は代表的な現代住宅で外壁の断熱性は住宅建設業界でトップクラスの断熱構造をしている。一階の玄関土間部を除き一階の全ての床を暖房している。そして、床から輻射された熱は一階の天井(空間)・二階の床材(100mm厚ALC板)・防音クッション・及び二階フローリング材の順に熱が伝導して行くので子供室や寝室では他の暖房設備を働かせた事は殆ど無い。一階を床暖房する事で二階も暖められると言う付加価値を得られる事は大きなメリットである。但し、全体の熱容量が大きいので二階が暖まるためにはタイムラグがある事はやむをえない事であろう。但し、ここの事項に関しては、床暖房メーカーは保証している分けではない、単に付加価値と考えて欲しい。

仮に、住宅の延べ床面積が120平米(概ね東京の平均的な床面積を想定)であり、総二階建てと仮定すると、1階の床面積(玄関の土間を含めて)は約60平米(約18坪・36畳)になる。床暖房に必要な単位面積あたりの熱量は約63.6Kcal/平米・時間と見込めるので、60平米の床暖房に必要なエネルギー量は概ね63.6Kcal/平米・時間x60平米=3,816Kcal・時間と計算できる。この熱量は、先ほどの薪1Kgを燃やした熱量よりやや少なく、IHクッキングヒーター4KWより少し多い程度で、平均的な大きさの住宅の一階部部分を暖房するのには特別に大きな熱量は必要としない。

夜間電力で蓄熱槽460Lの水を暖めるのに平均して8KWのヒーターで5時間通電して90℃のお湯として沸きあがるのである。 床暖房には温度制御で40℃のお湯にしてポンプで送り出して、戻りの水は20℃程度に下がるがこの熱は蓄熱槽に回収される熱である。差し引き20℃の熱を供給した事になる。それでは、電気代はどれぐらいになるのであろうか、夜間電力の基本料金5.95円/KWx8KWx5時間で一日あたり238円であり(電力料金は電力会社により変更される場合がある)、月間にしても約7000円強であり経済的である事が分かる。但し、上の熱量は床暖房のみの分であり、生活していく上で浴槽のお湯張り、シャワーやキッチンと洗面への給湯などは必ず必要になる事であり、この分を約半分の熱量と見込むと約11,000円〜12,000円程度の電気代で済むことになり経済的であることが分かるが、絶対的にこの数値内に入らない場合も在り得る、其れは、建物の断熱構造や天候・気候にも左右されるので参考までとしていただきたい。但し、この中にはキッチンでの炊事に使う電力(またはガス)のエネルギー量は計算に入れていない事をお断りしておくが、炊事に使うエネルギー量は床暖房のランニングコストと比べるとはるかに少ない。

 


矢印5-3 実際の床暖房の運転方法

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